【第7号】2. 意外と知らない貨物運賃の話 その3「貨物の燃油サーチャージ」

前回までの記事はこちら

今回は、貨物の燃油サーチャージの考え方についてご紹介します。
旅客同様、貨物でも燃油サーチャージを収受していますが、その背景は10月2日号の記事でも紹介したように、燃油価格の高騰により貨物を利用するお客様にも燃油サーチャージの一部をご負担いただくために設定されました。

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貨物の燃油サーチャージは旅客とは異なる考え方での適用となりますので、そのあたりも含めて説明をしていきます。

指標となる燃油価格

貨物もシンガポールケロシンを指標としている航空会社が多いのですが、中には5大市況や7大市況といって、様々な燃油価格の平均を適用することもあります。
例えば、シンガポールケロシンの他にニューヨークやロサンゼルス、ロッテルダム、北西ヨーロッパ市場など諸々あるのです。旅客はシンガポールケロシンと決まっていますが、貨物は航空会社によって指標となる燃油が異なるのですね。

見直し期間について

旅客の場合は、2ヵ月か3ヵ月見直しのどちらかで決めて、2ヵ月おきまたは3ヵ月おきに見直しを行いますが、貨物は各社でどの程度の期間の平均価格にするかを決めます。貨物では、3ヵ月、2ヵ月はもとより1ヵ月や2週間、1週間、中にも20日という会社もあるのです。

では、次にこの見直しをどのように適用していくのか、説明します。
例えば、2ヵ月と設定した場合、貨物では2ヵ月の平均価格、例えば4月と5月の平均価格が確定したらレベルを確認し、次は5月と6月の2ヵ月平均価格と1ヵ月ごとに見直していく必要があります。旅客の場合は、下の表のように見直し月がかぶることはないのですが、貨物は月単位であれば毎月、週単位であれば毎週、平均価格を確認していく必要があるのです。

≪図≫見直し期間.JPG

このように同じ見直しが2ヵ月と言っても、旅客と貨物とでは考え方が異なるわけです。

適用基準

次に必要なのが、どのレベルになったらいくらにするかという適用基準表です。旅客もこの適用基準表を設定しており、航空会社のウェブサイトを見ると表が掲載されていますが、燃油価格は10ドルきざみがほとんどです。
しかし、貨物の場合はこれがまた細かい!! 5ドル単位や7ドル単位で、さらに範囲も航空会社によっては例えば100.37~105.37と小数点まで細かいレベルとなっているのです。
これが週単位の見直しの場合、毎週細かいレベルとの照合をして確認するのです。大変な仕事ですね。

燃油サーチャージ額

レベルの確認をして、金額が変更になったら申請は必ず行わなければなりません。
ここで必要なのが、補填率が入るか計算を行うことです。10月15日号の記事で詳細に説明をしていますが、燃油コストの一部をお客様にご負担いただくという考えから、収受する燃油サーチャージは燃油コストより上回ってはいけないのです。

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計算する時も、各航空会社のフライトスケジュールや燃油コストなどを確認しながら、補填率を試算していきます。
また、フレーターと呼ばれる貨物専用機は違いますが、旅客便の場合は旅客の燃油サーチャージも収受するため、貨物との按分も必要となってくるのです。これは逆に旅客の燃油サーチャージを試算する時も行っています。

適用期間

燃油サーチャージの補填率が入ったら、申請を行いますが、旅客と大きく異なるひとつが適用期間の考え方です。
旅客は、2ヵ月おき、3ヵ月おきで見直す時期も適用開始日も決まっており、4月~9月分と10月~3月の年2回設定申請を行い、定めた見直し時期に燃油価格を確認することになっています。
しかし、貨物は1回設定申請を行ったあと、6ヵ月以内であれば金額が変更になる度に適用期間が1ヵ月毎延長されるのです。貨物と旅客と異なる考え方なので!!

≪図≫適用期間.JPG

今回のまとめ

・貨物燃油の指標は航空会社により異なる
・貨物燃油の適用基準の単位や範囲はとても細かい
・補填率の計算も細かい

次回は、貨物のインシュアランス・サーチャージについて説明をします。

この記事を書いた人・・・
浜田(副編集長)
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