新たに始まります、国際航空運賃の仕組みを基礎から学ぶ企画。主に「よく耳にするけど、実はちゃんとわかっていない」と思われるルールやキーワードをひとつずつ取り上げ、ご紹介していきたいと考えています。
なお、担当はタリフセクション員の持ち回りとなっているので、毎回少しずつ解説の雰囲気が変わってくるはず。そんなところもお楽しみいただければと思います。
第1回はグローバルインディケーターについてです。
グローバルインディケーターとは?
グローバルインディケーター―国際航空運賃に携わった事がある方でしたら、聞き慣れた用語だと思います。略して「ジーアイ」と呼ぶ事が多いのではないでしょうか。
ある地点から別の地点へ移動するのに、多くの場合、どこを通るか(どこで乗り継ぐか)の選択肢は複数あります。国際航空運賃は、その旅程の出発地と目的地を結ぶ飛行ルート(経路)によって設定され、この飛行ルートをグローバルインディケーター(以降GIと表記)というアルファベット2文字で表示します。
旅程の出発地と目的地との間に複数の飛行ルートが存在する場合に、実際の飛行ルート(経路)に従って適用する運賃を決定する、ということです。
例えば東京からユナイテッド航空でロサンゼルス行の直行便の航空券の場合、飛行経路は太平洋経由(例:TYO-LAX)となりますので、GIは「PA」です。
太平洋の英語表記「Pacific」の最初の2文字ですので、覚えやすいですよね。
南米に行くのでも同様。ロサンゼルスで乗り継いでブエノスアイレスに行くのも、やはりGIは「PA」。
一方、日本―TC1間の大西洋経由(例:NGO-PAR-BUE)はどうなるか。太平洋を通りませんね。ということで、「大西洋=Atlantic」の「AT」となります。
このようにほとんどのGIが経路の英語表記の頭文字からきています。
いろいろあるGI
日本―TC2間はもっと沢山のGIがあります。またロシア行とロシア以外の地点行で異なります。
最初にロシア以外の地点行ですが、例えば日本からアリタリア航空のローマ行直行便利用の航空券の場合、飛行経路は日本―ヨーロッパ直行便利用(例:TYO-ROM)となりますので、GIは「Trans Siberia」の頭文字「TS」です。
インドなどの南回り(例:TYO-DEL-LON)は「Eastern Hemisphere」の「EH」で、大西洋と太平洋経由(例:OSA-NYC-MAD)の場合は「Atlantic and Pacific」の「AP」となります。
そしてロシア行には5つものGIが存在します。
ロシアがIATAエリアのTC2とTC3に分かれることはご存知ですよね。ウラル山脈を境に以西がTC2、以東がTC3となります。
ロシア(TC2内)行直行便利用(例:TYO-MOW)のGIは「Russia」の「RU」、スカンジナビア航空などのヨーロッパ直行便を利用して乗り継いでモスクワに入るなどの経路(例:TYO-CPH-MOW)の場合は「Trans Siberia」の「TS」となります。
札幌から中国国際航空で上海を経由してモスクワに入る経路(例:SPK-SHA-MOW)は極東経由ですので、「Far East」の「FE」です。ちなみに、上海経由でロシア以外のヨーロッパに行く場合は、「FE」は存在せず「EH」になります。中国は南回りなんですね。
その他にFE/TS以外の経路で中東またはヨーロッパ経由(例:TYO-DXB-MOW)は「EH」、大西洋と太平洋経由(例:TYO-CHI-MOW)は「AP」となります。ロシア行はGIが沢山あって覚えるのが大変です。。。
さて、残りはTC3行ですね。
これは一番簡単で「Eastern Hemisphere」の「EH」のみとなります。一番覚えやすいですよね!
GIには日本発着以外にも下記の通り、TC1内の「WH」やTC2内、TC3内の「EH」があります。
また、運賃額は経路によって変わることが多いです。
例えば日本航空で2021年4月1日出発の東京発サンパウロ行、予約クラスBでGDS検索してみると、GIが「PA」で往復506,000円ですが、GIが「AT」だと往復210,000円になります(2021年2月8日時点)。
時間よりも料金重視のお客様がいらしたら、是非GIに注意して運賃検索してみてください。
・グローバルインディケーターは飛行ルートをアルファベット2文字で表したもの
・TC3内のグローバルインディケーターは「EH」のみ
・同じ区間でもグローバルインディケーターが異なると運賃額も異なることがある
柏木&冨塚(タリフセクション)