【第27号】4. OFCの仕事紹介~大学講義編

 OFCでは、将来航空や旅行業界を目指す方向けに、学校で業務内容を紹介したり、国際航空運賃の仕組みを解説したり、という活動に取り組んでいます。

 昨年度に引き続き、去る10月7日、桜美林大学の「空の仕事」という講義で運賃制度について話してきましたので、今回はその様子をご紹介します。

 

 

 講師を務めたのは、一昨年・昨年に続き3回目となります、編集長の関本です。
 

 

準備のことなど

 残念ながら新型コロナウイルスの影響は大きく、講義を実施した2021年10月7日段階では各種制限が全面解除となっていなかったため、2年続けてオンラインでの参加となりました。

 関本は自宅から繋いでいます(会社だと18時前後に帰宅する人が出始めて、夕方の講義には向きません)。

 

 昨年度までは、航空業界が好調である、あるいはすぐに回復してくることを前提に、「収入を更に伸ばすための運賃施策とシステム投資」といったテーマを中心にお話してきました。

 しかし今年度は、航空業界全体がビジネスモデルを転換し、非航空分野や、JALの場合はLCC分野での収入確保を目指さなければいけない状況を踏まえ、講義内容も入れ替えています。

 ちょうど桜美林大学では、この講義を担当される先生がビジネスマネジメント学群、アビエーションマネジメント学類の中村泰寛先生に変わったところ。中村先生はJALのOBですが、最後はジェットスターに出向されていたということで、LCCにはとても詳しい方です。いわゆるフルサービスキャリアが、LCCとどのように棲み分けを図っているのか、運賃の観点から少し多めに解説してみようと考えて準備を進めました。

 

 

今年の講義の様子

 さて、講義のテーマは「国際航空運賃とは」で、昨年度と変わりません。

 桜美林大学のこの講義では、JALグループの会社からゲスト講師が数名招かれ、各社の特徴や業務内容をお話することになっていますが、OFCはこの下期で最初の外部講師。果たして学生さんの反応はどんなものなのか、やや緊張しながらの参加となりました。

 

 

 簡単な自己紹介のあと、まずは国際航空運賃の歴史へ。ちょうど、このニュースレターで連載している「国際航空運賃の歴史と変遷」を要約して、学生さんにもわかりやすいように再構成した感じです。

 

 どこで話をするときも、必ず使うのがこのスライド。JALの国際線初便のデータです。当時はサンフランシスコまで2か所を経由して30時間かかっていたんですね。という話ではなく、注目していただきたいのはツーリストクラス(後のエコノミークラス)250,175円という運賃額。今なら「お盆や正月なら、このくらい仕方ないかな」という金額に思われるかもしれませんが、大卒の国家公務員初任給が8,700円の時代。現代では物価が20倍以上になっていますから、単純計算で500万円を超える高額ということになります。

 学生さんの中には、カリフォルニアのディズニーに遊びに行く方も、そちらの大学に留学される方もいるでしょう。でも、往復の運賃が500万円だったら、とても行けないですよね。 今はいかに海外旅行が手軽になったか、ということを示す例です。

 

 その後は、「ヨーロッパに行くのに、直行便とドバイ経由では規則がどう違うのか?」や「シーズナリティの設定次第で、出発日をちょっとずらすと運賃額が変わる」というような、また海外旅行が再開した折には何かしら役立ててもらえそうな話を織り交ぜつつ、複雑で難解な国際航空運賃の世界に触れていただきました。

 

 とにかく複雑な運賃制度。「そんなに難しくしなくてもいいんじゃない?」と思われるのは当然のこと。旅行会社で働いている皆さんも、「規則がちょっとずつ違う運賃がたくさんあって面倒だ」と感じられているかもしれません。でも、そんな制度にもちゃんと意味があるんです、というお話をして、運賃の解説は終了しました。

 

 

航空業界のこれから

 最後に、航空会社が、需要が回復してくる将来に向けて、どんなことを考え、運賃を出してくるのか、というようなことに触れて終了。

 GDSという古い仕組みにはやはり限界があり、恐らくその画面を学生さんが見たら「こんな骨董品みたいなサービスを使っているのか!」と驚かれるのではないでしょうか。コマンド覚えるのも大変ですし(最近はGUIでかなり入力が楽になっているとは言え)。

 NDCなどの新しい技術や、アライアンスを超えたグローバルな提携など、最新の動向もOFCでは抑えています。旅行業界向けのセミナーでは、そうした一般的なお話をする時間がなかなかなく、どうしても手配の技術的な運賃規則の注意事項に終始してしまいますが、業界外の方向けに「わかりやすく」を意識してお話すると、また気分が違うものだな、と思いました。

 

 

講義を受けての感想

 自分が大学生だった頃と違って、今の学生さんはみんな真面目なようで、ちゃんと感想を提出しているそうです。あとで取りまとめて中村先生から送っていただきました。少しご紹介して終わります。

 

今まで運賃は、同じクラスに乗っていても他の乗客の方より高いと損した気分になっていましたが、今回の授業で運賃設定の仕方や利用条件の設定などがあることを学び、設定価格にとても納得できました。

 

今まで、旅客側からの目線だけで航空運賃の仕組みを捉えていたのですが、航空会社側からの目線でみると、航空運賃の仕組みは、合理的なシステムであるという事が理解出来ました。

 

 うっかりすると「なんか高い席ばっかりで、どうなってるんだ!」と思われがちな航空会社の運賃制度。安いものには理由があり、同じクラスで同じサービスを受けても運賃に差があるのは不公平ではなく、利用者と航空会社双方にとって合理的な仕組みなんだ、ということをわかってもらえてよかったです。

 

 本当は全部ご紹介したいところですが、多くの感想を頂いて長くなり過ぎるので、ほんの一部に留めておきます。

 

 現在、OFCでは旅行会社の皆様向けのセミナーを一時中断しております。今後、海外旅行需要の回復に合わせて、役に立つ知識を盛り込んだセミナーをまた企画してまいりますので、ぜひご期待ください。

 また、各社の状況に合わせて個別セミナーのご提案なども可能です。詳しくは、以下のページをご覧ください。

旅行会社向けセミナーについてはこちら

 

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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