【第32号】1. 日本発運賃の歴史と変遷(その24)航空運賃の認可制と届出制

 OFCには日本発の国際航空運賃の情報がたくさん集まっている。それがOFCタリフシリーズの情報源である、ということは、これを読んでいる方ならよくご存知かと思います。

 今回は、予定を変更して、その背景となる法制度について少し触れてみたいと思います。

 

 ちょうど2022年度OFCタリフ(今回はWEBタリフのみの発売となります)の受付が始まったこともあり、タリフに載っている運賃規則情報の背景を知っていただければ、と考えています。

 

前回までの記事はこちら

 

 

国際航空運賃の認可

 この連載の第1回目で、外国航空会社が日本へ旅客便を就航させる際(自社便であっても、他社便のコードシェアであっても、とにかく日本国内で航空券を販売する場合には)、航空法第129条に従って、その運賃の認可を受けることになっていると説明しました。

 この認可制という仕組みは、中国や韓国などアジアの国々で維持されている制度と聞いています(ただし、どんな項目について申請して、どのような審査を受けて、認可されるのかは、国による。以前、韓国の航空券流通に関わる方と話したことがありますが、「日本よりも項目数が多い」と言っていました)。

※ 全世界的にどのくらいの数の国で定着しているのかまでは、調べられませんでした。

 

 国の認可を受けるということは、内容次第で認められないこともあります。その理由は様々で、役所ですから、運賃設計の考え方や仕組みの不備が主なものと捉えています(ぼくの感覚で、ですが)。決して、気分で認可したりしなかったりということではありません。

 そこで、認可を受けるに必要な書類を整え、航空会社が運賃を設定したいと思った瞬間から、なるべく手間なく素早く発売に漕ぎつけるお手伝いをするのが、OFCだということになります。余談ですが、運賃以外にも、燃油サーチャージや各種料金、新規就航時に必要な膨大な申請にも対応いたします。

 

 

 

認可制と届出制

 航空運賃は、全ての国で認可制なわけではありません。実は日本も、国際線は認可制ですが、国内線は「届出制」という仕組みに移行しています。

 

 届出制というのは、要するに、役所の審査を受けて認可されるのではなく、「これで売りたいです」と書類を持っていけば、自動的に手続きが完了するということ(厳密には、書類を出すという部分で様々な形があり、国によって状況が異なります)。認可制よりも、その運賃の発売開始までの期間と手間を減らすことができる一方、自由になり過ぎて混乱を生じる心配もあります。

 自由の国アメリカでは、航空運賃もまた企業間の競争に委ねるものとし、公的機関が恣意的に運賃額や制度を指導することのないよう、届出制が導入されています。しかも、その届け出も、運賃を設定する度に役所に書類を送るのではなく、ATPCOに運賃を登録してしまえば、それで届け出が完了したものと見なす、という大変合理的な仕組みになっているのだとか。

 

 かつて運賃の種類が少なく、それぞれの販売期間も比較的長めだった時代は、認可制で個別審査のような形が相応しかったのかもしれません。現在は、運賃の入れ替わりも非常に激しいですし、他の航空会社との競争の観点で、新しい運賃をすぐに発売開始したい事情もあり、届出制の方が優れているという考えもあるのでしょう。

 日本の航空会社のウェブサイトを見ると、セール運賃の情報の下の方に注釈として「政府認可条件」などという但し書きがあります。これは「認可制なので、ちゃんと認可を受けられたら、こういう運賃を発売しますよ」という意味なんですね。

 

 

 

ATPCOへの登録

 少々話が脱線します。

 アメリカではATPCOへの登録を以て届出と見なす、ということを書きました。そのATPCOとは何なのでしょう。

 

 ATPCOとは「Airline Tariff Publishing Company」の略で、主に北米を中心とした航空運賃情報を集積するシステムです。類似のものに、ヨーロッパ方面で使われる「Société Internationale de Télécommunications Aéronautiques」、通称SITAがあり、両者が運賃額や規則情報のかなりの部分をデータとして保持しています。

 各GDSは、そういったデータを引っ張ってきて、旅行会社が座席を予約できるサービスを提供しています。言わば、GDSの情報の上流に位置するのがATPCOとIATAだと言えます。

 

 たとえばアメリカでは、ATPCOに運賃を登録すれば、その情報がSabreやGalileoといったGDSに流れていって、コンピューターの画面上でその内容を確認できます。この仕組みにより、実質的に届け出がなされたものとして、運賃が発売されるわけです。

 

 

 

 さて、次回は先月の続き。JALの新規就航路線(当時)の運賃を見ていきましょう。 

 それではまた。

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

タイトルとURLをコピーしました