今年も総合旅行業務取扱管理者試験が近付いてきました。10月23日に向けて、あと2か月を切り、そろそろ追い込みあるいは復習の時期に入った方もいるのではないでしょうか。
海外旅行実務のうち、国際航空運賃の出題には、OFCタリフが深く関わっています。
ここで確実に点を取って合格に近付くため、過去問をしっかり理解しておきましょう。というわけで、昨年公開したニュースレターの記事から、ポイント解説を再掲します。
※ 以下、本文中に「今年度」と書いているのは、前回令和3年度を指します。
今年度の国家試験も大きな傾向の変化は無く、結合運賃に関する問題を中心に運賃・航空券に関する知識を問われる問題、昨年も出題されたFare Calculationの問題が出題されました。
Fare Calculationの問題はこれからも出題が続く可能性があると言えますので、対策は欠かせないでしょう。
それでは、それぞれの問題の傾向についてもう少し詳しく見ていきましょう。
第1問がJLの運賃に関する問題、第2問がNHの運賃に関する問題でした。このように毎年本邦の航空会社の運賃で大問が2つ作られ、その中に小問が4~5問あります。この傾向は続いていますので、基本的な運賃知識を付けるのはもちろんですが、本邦の航空会社の運賃規則の変化についても情報をしっかり把握しておくと、試験当日に焦らずに問題に挑むことが出来るでしょう。
あくまで国家試験は試験上の旅程、規則、問題となりますので、現在有効な運賃がそのまま問題に使われるとは限りません。その点は注意して、丸暗記では無く、内容を理解して対策を講じていく必要があるでしょう。
まず、第1問では基本的な運賃算出の問題が出題されました。旅程はひとつで、運賃計算上の折り返し地点を変えたり、使用する運賃を変えるなどして、様々な運賃を算出する問題です。これは毎年と傾向は変わりません。基本的な運賃ごとのシーズナリティ、ウィークナリティの適用、途中降機料金や特定便追加運賃などの適用を注意深く見ていきましょう。
特に引っかけのような問題は無く、途中降機地点はどこなのか、ということを、折り返し地点が変わっても整理して把握していく、などの基本的なことが出来ていれば、解ける問題でした。
第1問の最後では、運賃算出ではなく、異なる運賃を結合した場合の運賃規則について問われる問題が出題されました。以下のような問題です。
問4. 上記問3. で算出した運賃及びその航空券に関する次の記述のうち、正しいものをすべて選びなさい。
a. この航空券を2021年5月15日(土)に予約を完了した場合、発券期限は2021年5月21日(金)である
b. この航空券に適用する運賃で、最も短い旅行日数の旅程を手配する場合、MAD-LON間BA461便の旅行開始日は2021年8月5日(木)、LON-TYO間JL044便の旅行開始日は2021年8月6日(金)となる
c. この航空券を2021年5月15日(土)に発券後、日本航空が2021年7月1日(木)に日本政府の認可を受け、2021年7月17日(土)出発分からJL043便・JL044便の特定便追加運賃(Qサーチャージ)を改定した場合においても、差額調整は行われない
このように、正しいものをすべて選びなさい、という問題が近年出題されますが、これは選択肢のすべてにおいて正しい知識が必要であり、内容についても一言一句確認していく必要がある気の抜けない問題です。
選択肢a は単純な発券期限の問題のようですが、注意が必要なのは、問3 で使われていた運賃が往路・復路異なる運賃の結合であった点です。結合可能運賃でどちらの規則を適用させるのかを確認し、そのうえで発券期限の考え方を問われていると言えるでしょう。
選択肢b も最短旅行期間を問う問題ですが、こちらも運賃を結合した際の運賃規則の考え方を把握した上での知識を求められています。
選択肢c は昨年も出題された「運賃・運賃規則の適用はいつの時点のものが有効か」、いわゆる発券日ベースと呼ばれる規則に関する問題でした。
次に、2年連続の出題となったFare Calculationの問題です。
問5.
以下の条件(1.~4.)において、往路にValue Q運賃、復路にValue V運賃を適用した場合、発券されたeチケットの運賃計算情報(Fare Calculation)欄に表示されるものは次のうちどれか。
a. 04SEP21 HKD NH X/TYO NH MNL 605.00 NH X/TYO Q40.00 NH HKD 605.00 NUC1250.00END ROE100.000000
b. 04SEP21 HKD NH X/TYO NH MNL 705.00 NH X/TYO Q40.00 NH HKD 605.00 NUC1350. 00END ROE100.000000
c. 04SEP21 HKD NH X/TYO NH MNL Q40.00 705.00 NH X/TYO Q40.00 NH HKD 605.00 NUC1390.00END ROE100.000000
d. 04SEP21 HKD NH X/TYO NH MNL 705.00 NH X/TYO Q40.00 NH HKD 705.00 NUC1450. 00END ROE100.000000
※ 一般社団法人 日本旅行業協会開催 令和3年度問題・資料より抜粋
この問題は、昨年度から少し発展した形での出題となりました。昨年はTYO – SIN – TYO という、いわゆる単純往復旅行の問題でしたが、今年は日本国内線が増えました。
運賃の算出という視点で見ると、+10000 円の日本国内アッドオン運賃を追加するだけなのですが、Fare Calculation で表すと少し悩まれる方もいるのではないでしょうか。国内アッドオン運賃は特に指定が無い限り、運賃に上乗せして計算されるので、Fare Calculation上でもそのように表します。TYO 発MNL 行の往復の運賃額が131,000 円であれば、それに+10000 円した141,000 円の1/2 をHKD 発MNL 行運賃として算出し、HKD からMNL のFare Calculation で表します。
特定便追加運賃はQサーチャージとして別に表しますので、この表し方の違いが分かっているか、正しく運賃を算出し、Fare Calculation として表すことが出来るか、が問われています。少し発展した問題となった印象です。
このようにFare Calculation の決まりなどから、様々なバリエーションの問題が考えられますので、今後も出題される可能性はありそうです。
このように、今年も大きな変更はないものの、実務に近いFare Calculation の問題や、運賃の適用の問題などが出される傾向が続いています。運賃の算出だけにとらわれず、基本的な規則の確認や、運賃の適用の仕方などをしっかり身に着ける必要があるでしょう。
この記事を書いた人:
藤田(航空営業グループ)