【この連載の過去記事はこちらから】
・【第36号】4. 運賃規則の雑学知識(その1)
・【第37号】4. 運賃規則の雑学知識(その2)
・【第38号】4. 運賃規則の雑学知識(その3)
・【第39号】3. 運賃規則の雑学知識(その4)
・【第40号】2. 運賃規則の雑学知識(その5)
2020年初頭から深刻化した新型コロナウイルス感染症は、ようやく各国の入国制限が緩和され、徐々に落ち着きを見せています。もちろん、病気としては決定的な克服に至っていませんが、国際的な経済活動の制限を続ける局面ではない、ということで合意が形成されつつある状態に思われます。
日本は相対的に慎重な方で、全面的に外国人の入国制限をなくし、日本人の海外渡航にもほとんど規制がなくなったところで、まだまだ海外旅行しようとする人は多くありません。むしろ、円安効果で外国人観光客が目立ちます。コロナ以前、かつては日本発の海外渡航者の方が、日本に来る外国人より圧倒的に多かったのですが。
さて、この2・3年ほど、実質的に鎖国状態だった中で、手元に航空券を持っていても旅行できる状況になく、払い戻すか日程を先延ばしするか、と悩んだ方も少なくなかったでしょう。
本来であれば、GDSのカテゴリー16「Penalty」という項目に払い戻す際や変更するときの条件、手数料などが細かく定められていまして、安いチケットではどうにもならないこともありますよ、というのは、OFCのセミナーやこのニュースレターでも触れてきたところです。
しかし、海外に行きたくても行けない。そもそも飛行機が飛んでいない。こういう状況では、今回の旅を諦めるのにかかる費用を旅客側が負担するのも難しい(便がキャンセルになれば、航空会社負担は当然のことでしょう)。
そこで、航空会社はどこも、GDSには書かれていない臨時の取り扱いで現場運用する例が見られました。OFCでは、日本語運賃規則をWEBタリフや旅行会社側でシステム利用していただくデータの形でご提供していますが、GDSに反映されていない航空会社ごとの決まりについては、残念ながら全てを盛り込むことができませんでした(GDSに書かれていない規則が適用されるという特殊な状況故のことと捉えています)。
この項では、どんな取り扱いがあったのか代表例をいくつかメモしておきたいと思います。このタイミングでこのような記事を掲載するのは、海外渡航の制限が撤廃されつつある最近、運用を変更し、元に戻したり、変更や払い戻しの規則を厳しくする例が見受けられるからです。
「GDSに載ってないけど、柔軟に対応してくれていたな」という航空会社が、急に方針を変えてGDS通りにするということもあり得ますし、「こういう時代もあったんだな」と数年後に振り返ると懐かしくなるかもしれません。
払い戻しは受け付けるがバウチャーで対応する
「どういうことだ?」と個人的に疑問が大きかったパターン。要はクレジットカード口座への返金とか銀行口座への振込とか、現金が返ってくるのではなく、将来乗るときに有効なクーポン的なものをあげます、という対応です。
疑問は、「お金が返ってこないなら、これは払い戻したと言えるのか?」という点。そもそも払い戻し不可の航空券であれば、これでも親切な対応と言えるでしょうか。バウチャーに有効期限がなければ、ぼくは許しそうな気がします。
払い戻すがしばらく時間がかかる
航空会社側の都合で、払い戻しの件数が多過ぎて事務手続きが追いつかないとか、全部一気に受け付けると手元の現金が枯渇してしまうので先延ばししたいとか、そういうご事情のようです。
聞いた話では、払い戻しでお金が返ってくるのは1年後とか2年後とか、そのくらいの長さもありました。2年かかると言われた方も、そろそろ無事に返金された頃でしょうか。
払い戻さないが変更を制限しない
実質的に航空券の有効期間を無限にする、という取り扱い。新しい旅程で取り直し続けることで、出発日を過ぎて無効になるのを防ぐわけです。
いつか世の中が落ち着いたら旅行しようと思っている人には一定の合理性があるように感じられる反面、特別なイベントのために出かけるつもりだった人は、「2年後じゃ意味ないんだよ」と考えたかもしれません。ちょうどサッカーのワールドカップが閉幕しましたが、こういう全世界持ち回りの大型イベントを狙っていると、厳しいですね。
真面目に迅速に払い戻し対応していた航空会社(特に日系など)は、経営的なところでの厳しさが報道されることもあり、見ているこちらもドキドキしました。
ここに来てようやく、特別対応も概ね終了し、航空会社の収支状況も改善しつつあります。運賃規則は航空会社が決めるもので、発券前に急に変わっても仕方がないというのは、お約束的な話ではありますが、コロナ禍での特殊な状況とは関係なく、いつ何時買おうと思っていた航空券のルールが変わるかはわかりません。必ずGDSの規則を読み込む、あるいはOFCのWEBタリフなどで自分の理解が合っているかを確かめる、など間違いのないようにしていただければと思います。
なお、海外渡航手配が少しずつ出てきて、運賃規則を参照する機会が増えた旅行会社の皆様、1月からのWEBタリフ新規利用も可能ですので、ぜひ営業担当までご連絡ください。
しばらく国際線に触れていなくて不安だという方には、規則の定義などを解説した『日本発運賃一般規則』も販売しております。こちらもぜひ事務所に1冊、ご用意ください。
それではまた。
この記事を書いた人:
関本(編集長)