【第44号】2. 日本発運賃の歴史と変遷(その36)最終回:運賃の変化を捉えることの難しさ

 この度、当社は事務所を移転することを決め、そのご案内は皆様にお送りしておりますが、事務所環境の変化とともに、これまで社内に置いていたOFCタリフシリーズのバックナンバーを、倉庫に預けることにしました。

 要するに、在宅勤務の定着などに合わせて事務所スペースを削減し、あまり本をたくさん置いておけなくなったということでして、これを以て、本連載も終了とさせていただきます。

 

 最終回は、1954年から今までの運賃の歴史の中で、いかに運賃を正確に捉えることが難しくなったか、というお話です。

 

前回までの記事はこちら

 

 

OFCタリフシリーズの変化

 以前の記事で、創刊当初のOFCタリフ書籍をご紹介しました。

 当時はIATAの一律の運賃が主流で、キャリア運賃の掲載は徐々に増えていきながら、本はかなり薄い時期が長く続きました。

 

 2020年くらいまでのOFCタリフをご存知の方は、本がかなり分厚くなったことを思い出せるでしょう。

 最も掲載ページ数が多かった時代は、TC1、2、3それぞれに内容を分け、合わせると電話帳と同じくらいの厚さだったかと思います。でもこれはキャリア特別の、しかも定番の運賃だけ。書籍の性格上、1週間限定のような短期間で消えるものは載せられませんし、IATA運賃は廃止され、IT運賃は別冊で、とにかく誰もが使えるキャリア特別運賃、これだけであんなに情報量が多かったわけです。

 

 こんなにも運賃の種類が増えるというのを、OFC創立当初は誰も想像しなかったでしょう。

 ただ、たくさんの運賃があるということは、新しく登場するものも、退場するものもあり、変化が早くなっていきます。何よりも運賃額は上限認可制の下で刻々と変わっていきます。書籍という形態であらゆる情報をご提供するのは難しくなってきました。

 

 転換期には、運賃額の掲載を取りやめまして、これで若干ページ数が減ったはずです。2021年度、最後のOFCタリフシリーズを開くと、並んでいるのは規則のみ。見積もりの参考に運賃額を見たいんだという旅行会社の方のお話や、正確な運賃額をデータベース化したいけど持っていないかというコンサルティング的なお問い合わせもありましたが、GDS上に無限に存在する運賃の情報を全て取り揃えることは不可能。OFCは「航空運賃の会社」と言うよりも「運賃規則の会社」に変わったんだ、と言うことができるかもしれません。

 

 更に、規則も頻繁に変わるようになりました。

 旅行会社の方であれば、予約してから発券までにルールが変わってしまったとか、急いで発券するようにメッセージが流れてきたとか、ご経験あるんじゃないでしょうか。

 他社への対抗やマーケティング観点で運賃額が変動していくのと同様、規則もまた少しずつ様子を見ながら変化するようになってきました。こうなると、書籍は発行した瞬間から情報が古くなってしまいます。そこで2022年度は書籍を休止し、WEBタリフのみのご提供に切り替えました。

 

 長らく書籍をお使いだった方からすると、WEBには馴染めないという印象もあるかもしれません。ただ、WEBタリフの方が情報更新が早いですし、情報量が格段に多くなります。一度慣れてしまえば、こっちの方が便利だな、と感じていただけるものと思っています。

「紙からWEBへ」という時代の流れに乗って、OFCタリフシリーズもWEB化したわけですが、その根底にあるのは世間の流行ではなく、運賃の変化でした。

 

 

 

で乗ったライアンエアーやイージージェットには少々戸惑いましたが、最近では慣れたものです。

 

 

運賃は相場の時代へ

 近年はNDCの浸透もあり、航空会社が運賃額をコントロールし、最適な(誰にとっての、という話はさておき)航空券を市場に流通させる割合が増えています。

 

 この連載では、格安航空券の時代の話もしました。あれはとにかく大量に捌くために、旅行会社の手を借りて売るので、価格の主導権は航空会社になかった時代。旅行会社を回ると、同じ航空券が、力関係の中で少しずつ違う値段で売られていました。

 

 が、現代は航空会社主導で運賃額が小刻みに変化します。昨日と今日では全く違う値段のものが出てきてびっくりすることも。

 あまりに変化が早いので、予約してから発券まで何日も待っていられません。「今この値段なのは、今この瞬間だけ」とばかりに、発券リミットを日数ではなく時間単位で管理し、「予約後3時間以内に発券のこと」なんて規則も登場しました。

 

 また、規則の文面に明示されていなくても、メッセージで「早く発券してください」という趣旨の連絡が来ることもあり、かつてのように団体で席を抑えておいて云々、というのはできない時代になってしまったんですね。航空会社に追い立てられて発券するというのも、昔では考えられないことのような気がします。

 

 運賃は水物。魚と同じ相場商売。21世紀に入り、日本に就航する航空会社数がどんどん増え、運賃が多様化した結果、規則も運賃額も複雑になり過ぎた感じがします。この捉えどころのなさがまさに、連載最後の「日本発運賃の変遷」だと考えています。

 

 これからどうなっていくのか。前回お話したように、片道ベースのLCC運賃が広まっていくと、国家試験に出てくるような運賃計算の考え方も変わりますし、数多ある航空券の中からお客様に最適なものを手配するという旅行会社の使命にも影響があるでしょう。

 それでも、運賃に関する情報はとても大事なもので、GDSのわかりにくい英語の羅列を整理し、日本語でご提供することはOFCの大事な仕事のひとつであると思います。

 ちょうど来年度のWEBタリフお申し込み受付が始まりました。少しずつ海外旅行が回復するであろう今年、ぜひWEBタリフを活用しての手配をお願いいたします。

 

 また、規則のあり方が変わっていけば、当然、国家試験で問われる内容も変わることでしょう。これからまた、セミナーや講座などの教育商品展開も進めてまいりますので、「運賃について勉強したい」という方がいらっしゃれば、ぜひご参加ください。

 

 

 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

 

この記事を書いた人:

関本(編集長)

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